手放す習慣──「減らす」ことで心が整う

「もう、そんなに頑張らなくていいんですよ」
これは、以前ある講演会で私がかけた言葉です。すると、その方はふっと肩の力を抜いて、涙を流されました。

私たちはいつの間にか、いろんなものを背負いすぎてしまうようです。
家族のこと、職場での責任、人間関係、将来への不安──
気づかないうちに、心の中に“荷物”がいっぱいになっていきます。

江戸時代の貝原益軒は『養生訓』にこう記しています。
「物欲に執着すれば、心を悩まし、身を損ず」意訳 香月恭弘
つまり、手放すことができない執着は、心と体を乱す原因になるというのです。

私はうつ病の経験を通じて、「手放すこと」の大切さを身をもって学びました。
「こうあるべき」「こうしなければ」という思い込みや、自分に課した厳しすぎる期待を少しずつ手放していくことで、ようやく心が整い、前を向けるようになったのです。

「清活習慣」における“手放す”とは、捨てることでも、諦めることでもありません。
むしろ、「今の自分にとって本当に大切なものだけを、丁寧に抱えて生きる」ための整理です。

たとえば──
・もう使っていない物を一つだけ処分する
・今日一日だけ「~しなければ」を手放してみる
・嫌な出来事を夜に持ち越さず、眠る前に深呼吸して「今日はこれまで」と切り替える

物も感情も、少しずつ手放していくと、不思議と心に“余白”ができます。
その余白に、あたらしい風が通り、あたらしい自分が見えてくるのです。

私たちは、何かを手放すたびに、少しずつ軽くなります。
そして、軽やかに生きていく力が、自然と湧いてくるのです。