感謝の習慣──心を満たし、人生を穏やかにする力

忙しい日々の中で、私たちはつい「足りないもの」「うまくいかないこと」に意識を向けてしまいがちです。しかし、視点を少し変えて、「あるもの」「してもらったこと」に目を向けると、心がふっと軽くなり、穏やかさが戻ってきます。

それが、「感謝の習慣」です。

うつ病を経験した私は、自分に余裕がなくなると、感謝の気持ちを忘れていたことに気づきました。「なぜ自分だけが……」と周囲や状況を責める気持ちが強くなり、自分をも苦しめていたのです。そんな私が変わるきっかけになったのが、「今日、ありがたかったことを一つだけ書く」習慣でした。

どんな小さなことでもかまいません。
朝、家族が「おはよう」と言ってくれたこと。
天気がよかったこと。
スーパーのレジの人が笑顔だったこと。

それを思い返すだけで、「ああ、自分はたくさんの優しさに囲まれているんだな」と実感できるようになりました。

貝原益軒の『養生訓』には、「人を敬い、親に孝を尽くし、恩に報いることが養生の道である」といった趣旨の言葉がいくつも出てきます。つまり、感謝の心こそが、心身の健康を保つ要であるというのです。

現代では、「ありがとう」と言葉に出すことが減ってきたように感じます。けれども、感謝は相手のためだけでなく、自分自身の心を潤す行為でもあります。「ありがとう」と声に出すだけで、気持ちが温かくなります。まるで、心の中に一輪の花が咲くような感覚です。

私が提唱する「清活習慣」の中でも、感謝の習慣は、心の濁りを浄化し、心身を健やかに整える基本です。どんなに忙しくても、どんなに気持ちが沈んでいても、「何かに感謝できる自分」でいられることは、大きな支えになります。

今日という日に、ありがとう。
そう思える一日が、明日をもっと優しくしてくれるはずです。