歩く習慣──一歩一歩が心と体を整える

歩くことほど、簡単で奥深い健康法はありません。
特別な道具もお金もいらない。ただ足を前に出すだけ。
それなのに、心と体の両方に働きかける力を持っています。

私は毎朝、近所の田園を歩くことを日課にしています。
静かな風の音、小鳥の声、空の色の変化──
そのすべてが、心を洗ってくれるように感じます。
とくに気分が沈んでいたとき、歩くことで少しずつ心がほぐれていくのを何度も体験しました。

養生訓では、「身体を動かし、気を巡らすこと、すなわち病を防ぐ要なり」 意訳 香月恭弘 とあります。
つまり、気(エネルギー)と血の流れを良くするには、体を使うことが欠かせないのです。
歩くことはその最も基本で効果的な方法です。

また、歩くという単純な動作の中で、呼吸が深くなり、気持ちが整ってくるのも感じられます。
歩いているうちに、悩みが小さくなったり、考えがまとまったりすることもあります。

ポイントは、「速さ」や「距離」ではなく「心地よさ」です。
無理のないペースで、季節や景色を感じながら歩く。
それだけで、血流がよくなり、脳も活性化されます。
なにより「今日も歩けた」という小さな達成感が、自信につながります。

歩くことは、今日という日を丁寧に生きることそのものです。
一歩一歩、足元を感じながら進むその時間が、きっと人生をゆたかにしてくれます。