手放す習慣──握りしめたものをゆるめるとき

長く生きていると、心の中にいろんな「荷物」を抱え込んでしまうものです。
過去の後悔、人間関係のわだかまり、手放せないモノや思い出…。
それらが知らず知らず、心と体に重たくのしかかっていることがあります。
私自身、うつ病を経験するなかで、「頑張らねば」「迷惑をかけてはならない」といった思いを強く握りしめていました。
でも、ある日ふと、「もういいか」と小さく手放したとき、心がふっと軽くなったのです。
『養生訓』には明確な言葉はありませんが、貝原益軒は繰り返し「執着しない心」「平常心」を養うように説いています。
心の平穏を養うことが、病を防ぐと教えているのです。
手放すことは、あきらめとは違います。
自分にとってもう不要になった感情や習慣を、そっと降ろすこと。
たとえば、「こうあるべき」という思い込みや、「あのとき、こうしていれば」という後悔。
物でも人でも感情でも、ぎゅっと握った手を一度ゆるめてみる。
そこから、新しい風が入ってくることがあります。
年齢を重ねたからこそできる、しなやかな手放し方があるのだと思います。
最近は、終活や断捨離という言葉もよく聞きますが、私はこれを「心の整理」として受け止めています。
すっきりとした心には、元気が入りやすくなります。
心をすこやかに保つために、ぜひ「手放す習慣」を意識してみてください。