歩く習慣──足を動かせば、心も動き出す

一歩、また一歩。
歩くという動作は、最も自然で、最も基本的な運動です。特別な道具もいりません。けれど、これほど心身に効く健康法は他にないと、私は思っています。
養生訓では、「日々、身をうごかし、氣血をめぐらすべし」
意訳 香月恭弘とあります。
体を動かせば、気(エネルギー)も血もよくめぐる。つまり、生命の流れが滞らずに保たれるということです。歩くという行為は、それを日常の中で手軽にかなえてくれるのです。
私はうつを経験したことがあります。そのとき、家にこもりがちになり、体を動かす気力すら失っていました。
しかし、ある日、無理にでも外に出て、近所を散歩してみたのです。最初は10分ほど。それでも、風に触れ、太陽の光を浴びるだけで、少しだけ心が軽くなったのを覚えています。
それが、回復のきっかけになりました。
歩くことは、筋力の維持や認知症の予防だけではありません。
不安なとき、迷ったとき、落ち込んだときに歩くと、心の中のもやが晴れてくることがあります。リズムよく歩いているうちに、考えが整理されたり、新しい気づきが生まれたりします。
「歩くこと」は、自分自身との対話でもあります。
人生に迷ったら、まずは足を動かしてみる。それが、新しい道への第一歩になるかもしれません。