書く習慣──心を整える、言葉のチカラ

私たちは日々、頭の中でたくさんのことを考えています。
でも、その「考え」を言葉にして外に出す機会は、意外と少ないのではないでしょうか。

私は、うつ病を経験したとき、感情がうまく言葉にできず、自分の中で気持ちが渦巻いていました。
そんな時、ノートにそのまま気持ちを書き出してみたのです。
誰にも見せない、ただ自分のためだけの文章。
泣きながら書くこともありました。
でも、不思議なことに、書き終えると心が少し軽くなっている。
その積み重ねが、回復の大きな助けになりました。

書くという行為は、自分の心と向き合う時間です。
整理できなかった思いが、言葉になることで輪郭を持ち、自分を理解するきっかけになります。

養生訓にも、「心を平らかにし、言葉を慎み、身を修むること第一なり」意訳 香月恭弘 とあります。
つまり、日々の自省と静かな内省が、健やかな生き方につながるという教えです。

書くときに、うまく言葉にしようとしなくても大丈夫です。
箇条書きでも、ひとことでもいい。
「今日は天気が良くて気持ちよかった」
「ちょっと疲れている」
その一行が、心を整える入口になります。

手帳でも、ノートでも、日記でも、メモ帳でも構いません。
大切なのは、「書いて、気持ちを言葉にする」習慣を持つこと。
それが、心のメンテナンスになっていきます。

毎日の数行が、人生の安心につながります。
書くことは、心を健やかに保つ「養生」のひとつです。